交通事故でむちうちになったら診断書は必要?
診断書を書いてもらうのはなぜ?
診断書がないと損害賠償請求はできないの?
診断書はいつまでに提出すればいいの?
作成した費用は加害者に請求できる?
後遺症になったら新たな診断書が必要になる?
むちうちは、交通事故などで衝撃を受けた際、首がムチにようにしなることによって起こる症状を指します。
むちうちになったとき、診断書をどのようにして取ってもらうか、どのタイミングで必要になるかわからず悩んでいる方もいるでしょう。
編集部
むちうちになった場合、すみやかに診断書をもらわないと後で大きな損失を被ることも!
そこで本記事では、むちうちによる診断書について必ず知っておきたい知識を解説します。
- むちうちで診断書をもらう理由
- むちうちで診断書をもらう際のポイントや注意点
- 後遺症が残った場合の診断書について
診断書の取り方がわからない方はぜひ参考にしてくださいね。
目次
むちうちで診断書をもらう主な理由
まずは、交通事故によるむちうちで診断書をもらう理由を4つご紹介していきます。
編集部
なんのために診断書を取るのか、その重要性について確認していきましょう。
警察に提出して物損事故から人身事故に切り替えるため
交通事故に遭ってケガをした場合、物損事故ではなく人身事故となります。
人身事故の場合、警察により実況見分調書が作成され、事故に関する客観的な資料が揃えられます。
ただし、ケガをしても自動的に人身事故になるわけではありません。
編集部
物損事故から人身事故へ切り替えるためには、診断書の提出が必要になるのです。
事故とケガとの因果関係を証明するため
交通事故の被害者は、加害者が加入する保険会社を通して、治療費や慰謝料などの損害賠償金を受け取ることができます。
ただし、無条件で受け取れるわけではなく、ケガが本当に事故によるものなのかを証明しなければなりません。
編集部
事故とケガとの因果関係を証明できるのが診断書というわけです。
保険会社に提出する診断書は、損害賠償金を算定するための根拠となります。
そのため、記載される内容もより詳細なものになります。
- 事故日時・場所・状況
- 診断名(傷病名)
- 症状・受傷部位
- 治療開始日・治癒見込み日
- 治療内容
- 医師の所見
むちうちの場合、診断名は「頚椎捻挫」「頚部打撲」などと記載されます。
ケガの治療で休む際に勤務先に提出するため
むちうちの影響で仕事を休む場合、勤務先から診断書の提出を求められることがあります。
勤務先に提出する診断書には、むちうちが原因で働くことができない旨を忘れずに記載してもらいましょう。
なお「交通事故で仕事を休むと、収入が減ってしまうのでは?」と不安になる方もいますが、その点は心配ありません。
交通事故が原因で仕事を休んだ場合、被害者には「休業損害」が支払われるからです。
編集部
休業損害の額は、事故前の平均賃金の日額×休業日数で計算されます。
加害者が無保険であった場合に被害者本人が損害賠償請求するため
加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が治療費を直接病院に支払ってくれます。
この対応は、任意保険会社が窓口となって自賠責保険と任意保険の賠償金を一括して取り扱うことから「一括対応」と呼ばれます。
しかし、被害者が任意保険に加入していないケースでは、被害者が加害者の自賠責保険会社に対して直接損害賠償金の請求をしなければなりません。
これを「被害者請求」といいます。
編集部
被害者請求をする際は、被害者が診断書を取って提出する必要があります。
一方で一括対応の場合は、任意保険会社が代わりに手続きをしてくれるので、被害者からは診断書を提出しなくてもかまいません。
むちうちで診断書をもらう際のポイント・注意点
むちうちで診断書を取得する際は、いくつかの注意点があるので気をつけてください。
ここではとくに重要となるポイントを4つ紹介します。
整形外科の医師に診断書の作成を依頼する
むちうちの診断書をもらうため整骨院に行ってきたけど、院長から診断書をもらえなかった(涙)
編集部
整骨院で診断書を取得できると考えている人は多いようですね。
しかし、整骨院では「施術証明書」しか発行されません。
診断書は、医療機関を受診すると作成してもらうことができます。
むちうちの場合は、病院の整形外科を受診するといいでしょう。
整骨院では診断書をもらえないので、どうしても利用したいときは整形外科の医師と相談するのがおすすめです。
医師が「症状固定」と判断するまで通院する
医師から「症状固定」と判断されるまでは、診断書の作成を依頼しても断られるケースがあります。
これ以上治療を続けてもケガが改善せず回復が見込めない状態
このため、「症状固定」と認められるまでは通院することが重要です。
通院が終われば治療期間が確定し、診断書にも記載されます。
警察への提出は事故発生から10日以内が目安
警察に診断書を提出する期限は、法律で決まっているわけではありません。
しかし、事故発生から時間が経ちすぎると、ケガと事故との因果関係が証明しづらくなります。
したがって、どんなに遅くても事故発生から10日以内の提出が望ましいでしょう。
編集部
早いほどいいので、できれば2~3日の内に診断書を提出したいですね。
診断書の作成費用は加害者に請求可能
医師に診断書を作成してもらう際は、「文書料」という名目の費用がかかります。
費用は病院によって差がありますが、おおよそ3,000円~5,000円が相場です。
なお、診断書の作成費用は交通事故の加害者に請求可能なので、領収書は捨てずに保管しておきましょう。
編集部
診断書を取るときは、前もって相手方の任意保険会社に連絡を入れておくと安心ですよ。
後遺症が残った場合は後遺障害診断書を取得する
むちうちの症状が治らなくて後遺症が残ってしまった…
後遺症の診断書も同じでいいのかな?
編集部
後遺症が残った場合は「後遺障害診断書」と呼ばれる書類が新たに必要となります。
ここでは後遺障害診断書について詳しく解説します。
後遺障害診断書はどんな書類?
むちうちによる損傷が完治せずに症状固定と診断され、後遺症が残った場合は、医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書は、後期障害認定の申請に必要となる重要な書類です。
後遺障害診断書には、以下の内容が記載されます。
- 後遺症が発生した部位、症状の内容
- 本人の自覚症状
- 検査結果
- 症状固定と診断された日付
編集部
後遺障害診断書は、一般的な診断書とは違い決まった書式が定められています。
保険会社に連絡すると送付してもらえるので、その後は主治医に記入を依頼しましょう。
むちうちで後遺障害の認定を受ける基準
後遺障害の認定を受けるためには、法律によって規定された後遺障害等級の基準を満たす必要があります。
後遺障害等級は症例によって1級~14級に区分されており、等級によって請求できる慰謝料は異なります。
むちうちで後遺障害の認定を受ける可能性があるのは次の2つです。
- 14級9号(局部に神経症状を残すもの)・・・むちうち損傷に起因する症状を医学的に証明できなくても、その症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの
- 12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)・・・むちうち損傷に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見などの他覚所見により、医学的に証明しうるもの
編集部
むちうちによる損傷は比較的軽度の認定となるケースが多いです。症状の経過によっては、申請が却下される「非該当」となる場合もあります。
自覚症状をしっかり医師に伝えることが大切
むちうちは軽症で済むことが多く、レントゲン検査を行っても異常が見つからない場合もあります。
症状の存在を医学的に証明できなければ、後遺障害の認定は非常に難しくなるでしょう。
しかし、患者本人がしっかりと自覚症状を訴えて後遺障害診断書に記載してもらえば、後遺障害の等級認定を受けられる可能性は残されています。
編集部
軽い症状であっても身体に違和感があるときは、その事実を細かく医師に伝えることが大切ですよ。
まとめ
本記事では、むちうちになった場合の診断書の取り方について詳しく解説しました。
お伝えしてきた内容を以下にまとめます。
- 診断書は人身事故への切り替えや勤務先への提出時に必要
- 整骨院ではなく整形外科の医師に作成を依頼する
- 警察への提出はどんなに遅くても事故発生から10日まで
- 診断書の作成費用は加害者に請求可能
- 後遺症が疑われるときは別書式の後遺障害診断書が必要
診断書は損害賠償請求するために欠かせない重要な書類です。
むちうちが軽症だからといって病院を受診しないままでいると、後から重大な自覚症状が表れたときに困る事態になります。
編集部
警察への診断書の提出が遅くなるほど不利になるので、できるだけ早く病院へ駆け込んでくださいね!